BtoBブランディングの基本|中小企業にもたらすメリットと「ライブ協賛」という新しい手法

「BtoBブランディングの重要性は理解しているが、何から手をつければ良いかわからない」「Web広告や展示会など、既存の施策では競合との差がつかない」多くのマーケティング担当者や経営者が、このような悩みを抱えています。情報が溢れる現代において、単に優れた製品やサービスを持つだけでは、顧客に選ばれ続けることは困難です。

ここでは、BtoBブランディングの基礎から成功への具体的なステップ、そして既存の枠組みを超える「ライブ協賛」という新しい戦略まで解説します。企業のブランド価値を飛躍させ、持続的な成長を実現するためのヒントがここにあります。

BtoBブランディングとは

BtoBブランディングとは、企業の「評判」や「信頼」を可視化し、顧客や社会との間に築き上げるための全ての活動を指します。顧客に対する「品質や価値の約束」そのものであり、競合他社との差別化を図り「自社が選ばれる理由」を明確にするための事業基盤と言えるでしょう。

企業の根幹にある価値観や哲学、すなわちミッション・ビジョン・バリューを社内外に深く浸透させ、一貫したメッセージを発信し続けるプロセス全体が「BtoBブランディング」です。

BtoCブランディングとの違い

BtoBブランディングは、一般消費者を対象とするBtoCとは大きく異なります。最も決定的な違いは「意思決定プロセス」です。個人が感情や好みで比較的短期間に購入を決めるBtoCに対し、BtoBでは複数部署の担当者が関与し、機能性や費用対効果を長期的に比較検討した上で合理的に判断します。そのため、一度きりの取引ではなく、長期的なパートナーシップを築くことがゴールとなります。

コミュニケーション手法も、BtoCがテレビCMなどマス広告を多用するのに対し、BtoBでは顧客の課題解決に繋がる専門的なコンテンツや営業活動が中心となるのです。
中小企業こそブランディングが重要な理由
「ブランディングは大企業のもの」と考えられがちですが、実際にはリソースの限られた中小企業にこそ不可欠な戦略です。その理由、効果として次のような要素が挙げられます。

■信頼性を担保するため
……大企業に比べて知名度が低い中小企業にとって、ブランド力は顧客の信頼を補完する重要な要素となります。

■ニッチ市場で第一想起を獲得するため
……独自の強みや専門性を際立たせることで、特定の分野で「〇〇といえばこの会社」という確固たる地位を築くことが可能です。

■採用力と営業効率を向上させるため
……企業の理念や魅力への共感は、大手にも負けない採用力に繋がります。また、ブランドが確立されていれば、無名の状態から製品やサービスを説明するコストを大幅に削減でき、営業活動の効率も向上するでしょう。

BtoBブランディングが企業にもたらす3つの重要なメリット

BtoBブランディングに戦略的に取り込むことで得られるメリットは、単なるイメージアップにとどまりません。利益率の改善、人材獲得、そして事業の安定化といった、経営の根幹に関わる重要な効果があります。
価格競争からの脱却と利益率の向上
強力なブランドは、企業を消耗戦ともいえる価格競争から解放します。顧客が「この会社だから」という信頼や共感でサービスを選ぶようになれば、価格だけで比較されるステージから一線を画すことができます。製品やサービスの付加価値が顧客に正しく認識されることで、値引きに頼らない適正な価格での受注が可能になるでしょう。

さらに、既存顧客からの深い信頼は、より高単価なアップセルやクロスセルへと繋がりやすくなります。ブランド自体が営業の役割を一部担い、新規顧客獲得コストを抑制するなど、事業全体の利益率向上に大きく貢献するのです。

優秀な人材の獲得(採用ブランディング)

BtoBブランディングは、採用活動においても絶大な効果を発揮します。これは「採用ブランディング」とも呼ばれ、企業の理念や働きがい、カルチャーを社外へ発信することで、自社の価値観に合う優秀な人材を引き寄せます。入社後のミスマッチを防ぎ、社員のエンゲージメントと定着率の向上、ひいては離職率の低下に繋がる影響です。

求人広告への依存度を下げレバ、社員が自社を誇りに思い知人を紹介する「リファラル採用」の活性化も期待できるでしょう。「この会社で働きたい」という憧れを醸成し、企業の未来を担う人材からの応募を増やす力となります。

顧客ロイヤルティの醸成と継続的な事業成長

ブランディングは、顧客との間に短期的な取引関係を超えた、強固な信頼関係を築きます。この信頼に基づいた関係性は、LTV(顧客生涯価値)の高い長期的な取引へと発展していくでしょう。やがて顧客は自社の「ファン」となり、満足度の高いサービスを他の企業へ紹介してくれるようにもなります。また、ブランドへの信頼は、企業が新製品や新サービスを市場に投入する際の心理的なハードルを下げ、スムーズな導入を後押しします。このようにして築かれた顧客との絆は、市場環境が変化しても揺らがない安定した事業基盤となり、企業の継続的な成長を支えるのです。

BtoBブランディングを成功に導く4つのステップ

BtoBブランディングの実行は、プロセスを分解すれば迷わず着実に前に進められます。ここでは、ブランディング戦略を成功に導くための具体的な4つのステップを紹介します。

ステップ1|自社の立ち位置と課題を正確に把握する

まずは3C分析(自社・競合・顧客)を用いて市場環境を客観的に把握し、SWOT分析で自社の強み・弱み・機会・脅威を整理しましょう。

もっとも、フレームワークだけに頼るのではなく、既存顧客へのヒアリングを通じて「なぜ選ばれているのか」という生の声を聴くことが重要です。加えて、営業や開発など複数の部署を交えた社内ワークショップを実施し、自社が提供できる本質的な価値と課題を多角的に洗い出すことも大切です。

ステップ2|自社らしさを言語化する

現状分析で得た情報をもとに、次は「自社らしさ」の核となる部分を明確に言語化していきます。企業の存在意義である「ミッション」、目指す未来像の「ビジョン」、日々の行動指針となる「バリュー」から成るブランド・アイデンティティを定義しましょう。

上記を土台として、顧客に対して何を約束するのかという「ブランド・プロミス」を設定します。さらに、ブランドを人に例えた際の性格や語り口調(ブランド・パーソナリティ)を定め、創業の想いや事業にかける情熱を「ブランドストーリー」として紡ぐことで、共感を呼ぶ血の通ったブランドが生まれます。

ステップ3|誰に、何を伝えるか検討する

ブランドの核が固まったら、次はその価値を「誰に・何を」伝えるかを具体的に検討します。

まずはターゲットとなる顧客像を、役職や業務内容、抱える課題まで詳細に描いた「ペルソナ」として設定します。そして、そのペルソナが自社を認知し、最終的に契約に至るまでの思考や感情の動きを「カスタマージャーニーマップ」で可視化しましょう。このプロセスを通じて、ペルソナの心に最も響く「キーメッセージ」を開発します。

最後に行うのは、ブランドの本質を凝縮した、覚えやすく魅力的な「タグライン」の作成です。

ステップ4|施策の立案・実行・効果測定

最後のステップは、構築したブランド戦略を実行に移し、その効果を測定・改善していくフェーズです。Webサイトや広告、営業資料、社員の応対など、顧客がブランドに触れる全ての接点(タッチポイント)を洗い出しましょう。そして、どのタッチポイントで、どのメッセージを、どう伝えるかという具体的な「コミュニケーションプラン」を策定し実行します。

施策の成果は、指名検索数やWebサイトへの流入数、顧客推奨度(NPS)といったKPI(重要業績評価指標)で測定します。定期的に効果を分析し、戦略を改善していくPDCAサイクルを回し続けることが成功の鍵です。

BtoBブランディングの主な施策と「よくある壁」

ブランド戦略が固まったら、次はいよいよ具体的な施策の実行フェーズです。BtoBブランディングで用いられる手法は多岐にわたりますが、主にオンラインとオフラインの2軸で展開されます。

多くの企業は、これらの一般的な施策に取り組むなかで、効果が頭打ちになったり、競合との差別化に苦しんだりする「壁」に直面するでしょう。ここで代表的な施策とその限界をチェックし、次の一手を考えるための土台を築きましょう。

Webサイト・オウンドメディアによる情報発信

オンライン施策の中心は、自社で運営するWebサイトやオウンドメディアです。ここでは、顧客が抱える課題に寄り添う専門的なブログ記事やコラムといった「課題解決コンテンツ」を継続的に発信します。詳細なノウハウをまとめたホワイトペーパーやEbookをダウンロード資料として提供し、リード獲得と専門性の認知に繋げるのも良いでしょう。

また、具体的な成功事例を示す「導入事例」は、製品やサービスの信頼性を証明する上で欠かせません。近年では、製品デモや顧客インタビューを収めた「動画コンテンツ」も、テキストでは伝わりにくい情報を分かりやすく伝える手法として重要性を増しています。

展示会・セミナーなどオフラインでの接点創出

オフラインでの施策も、顧客との関係構築において重要な役割を担います。展示会のブースで製品デモンストレーションを行えば、顧客に直接サービスを体験してもらい、具体的な利用イメージを掴んでもらえます。。既存顧客向けのイベントを開催し、「ユーザーコミュニティ」としてファンを育成することも、長期的な関係構築に繋がります。

また、業界内でのネットワーキングを通じて、新たなビジネスチャンスを探ることも可能です。経営者やキーパーソンがセミナーに登壇し、企業のビジョンや思想を発信することは、業界内でのソートリーダーシップを確立する絶好の機会となるでしょう

既存施策の限界 |効果が頭打ちになる・競合と差別化できない

これらの施策は有効な一方で、多くの企業が壁に直面しています。 起こりうる問題として挙げられるのは次のとおりです。

■施策のコモディティ化
……Webコンテンツや展示会出展は、今やどの競合他社も行う基本的な活動となり、情報が埋もれ差別化が困難です。

■リーチ層の固定化と感情へのアプローチ不足
……施策を続けてもリーチできる層が固定化し、新たな顧客へのアプローチが難しくなります。また、合理的な情報発信だけでは顧客の感情に訴えかけることができず、記憶に残りません。

■費用対効果の悪化
……Web広告のCPA(顧客獲得単価)は高騰し続けており、従来の広告手法だけでは費用対効果が見合わなくなりつつあるのです。

BtoBブランディングの新たな一手「ライブ協賛」

BtoBブランディングでよくある施策における「壁」を打ち破り、顧客の記憶に深く刻まれるブランドを築くうえでの1つの答えは「ライブ協賛」です。一見、BtoB企業とは無関係に思えるこのアプローチが、なぜ今、注目すべきなのでしょうか。

なぜ「ライブ協賛」がBtoBブランディングに効くのか

ライブ協賛がBtoBブランディングに効果的な理由は、それが競合のいない「非競争領域」でのアプローチだからです。多くの企業がひしめくビジネスメディアとは異なり、エンターテインメントの現場で自社の存在感を際立たせることができます。

何より強力なのは、アーティストへの「好き」というポジティブで熱量の高い感情と、自社ブランドをダイレクトに結びつけられる点です。BtoB企業とエンタメという異色の組み合わせは「意外性」を生み、SNSやメディアで話題になりやすいでしょう。企業のキーパーソンもプライベートでは一人の音楽ファン。彼らに個人として心に響く体験を提供できるのです。

感情に訴えかけ、強力なファンを作る「体験価値」

ライブ協賛の本質は、合理的な説得ではなく「体験価値」の提供にあります。非日常空間での感動や会場を包む熱狂といった「忘れられない体験」は、そのままブランドへのポジティブな記憶として顧客の心に深く刻まれるでしょう。スペックや機能ではなく「好きなアーティストを応援する企業」という情緒的な価値でのブランドの記憶は、単なる取引相手ではないファンの創造に役立ちます。

また、アーティストとファンが長年かけて築いた強固な信頼関係を、自社のブランドイメージ向上に活用できるのも大きな魅力です。

潜在顧客へダイレクトにリーチできる「意外性」

ライブ協賛は、従来の広告手法では決して届かなかった層への扉を開きます。普段ビジネスメディアに触れない人々や、将来の顧客・社員候補となる若年層にも、企業の存在を広く知らせることが可能です。

また「あのライブを支えている会社」という、他社にはないユニークな形で第一想起を獲得できるかもしれません。従来の広告ではアプローチできなかった、全く新しい潜在顧客との出会いに繋がる可能性があるのです。BtoBの枠を超えた認知獲得は、予期せぬ事業提携やコラボレーションの機会を生み出すなど、ビジネスの可能性を大きく広げるきっかけにもなり得ます。

企業の社会的価値を高める「CSR・SDGs」への貢献

ライブ協賛は、企業の社会的価値を高める上でも有効な一手です。取り組みの必要性が周知されるようになったCSR・SDGsへの貢献の一環として、次のような効果もあるのです。

■文化・芸術の支援と企業の姿勢表明
……メセナ活動(芸術文化支援)の一環として、企業の社会貢献活動を具体的にアピールできます。言葉だけでなく「協賛」という行動で、文化を大切にする企業の姿勢を示すことが可能です。

■ESG経営とインナーブランディング
……この活動は、SDGsの目標「11.住み続けられるまちづくりを(文化遺産の保護)」などにも関連付けられ、ESG経営への貢献にも繋がります。また、社員が自社の活動に誇りを持ち、エンゲージメントが向上するなど、社内に向けたインナーブランディング効果も期待できるでしょう。

【参考】中小企業のためのSDGs活用ガイドブック(中小企業庁)

ライブ協賛によるBtoBブランディングの事例

大手企業によるライブ協賛では、認知度向上、地域活性化と店舗ビジネス拡大、そして競争相手に差をつける独自のイメージ確立などのさまざまな事例が存在します。ここで、その一部を紹介します。

ナカバヤシ × FM802音楽イベント「HIGH! HIGH! HIGH!」特別協賛

ナカバヤシ株式会社は、若年層への企業認知向上を目的として、音楽イベント「HIGH! HIGH! HIGH!」に2021~2023年の3年連続で特別協賛しました。

独自企画として「ロジカル・エアーノート 文字魂プロジェクト」を実施し、アーティストへの思いを文字で伝える双方向のコミュニケーション施策を展開しました。社名ロゴ入りのメッセージボードを全来場者に配布し、アーティストからの直筆メッセージをブース掲示することで、来場者のイベント満足度向上とSNS上でのロゴ拡散効果を実現しています。

【参考】協賛活動(ナカバヤシ公式Webサイト)

楽天株式会社による地域活性化の事例

楽天株式会社は、広島県内で開催されたライブサーキットイベント「MUSIC CUBE 14」に協賛し、「楽天市場」内に特設サイトを開設しました。同イベントは新しい音楽やアーティストとの出会いを通じて、広島のミュージックシーンの底上げをミッションに掲げており、楽天の企業理念である「インターネットを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」と合致しています。

具体的な取り組みとして、特設サイトでの広島県内出店店舗と参加アーティストの紹介、参加アーティストのCDやコラボTシャツの販売、Twitterキャンペーンでのサイン入りグッズプレゼント、会場での楽天市場ブース出店とトークショーの実施を行いました。71組のアーティストが参加する大規模イベントとの連携により、地域活性化と店舗ビジネス拡大の両方を実現する戦略的協賛となりました。

【参考】広島の音楽イベント『MUSIC CUBE14』に協賛(楽天株式会社ニュース)

KDDI株式会社によるライブ協賛・インフラ支援の事例

大手通信事業会社のKDDI(au)は、競合他社との差別化を図るため「音楽とともに、おもしろいほうの未来へ。」プロジェクトを発足し、通信インフラと音楽の融合による独自のブランドポジションを確立しました。「通信のつなぐチカラで音楽の可能性をすべての人に解放する」というコンセプトで、複数の音楽フェスに戦略的協賛を実施しています。

フェス会場では、公衆Wi-Fi環境の整備、車載型基地局の配備などの実用的なサービス提供により、来場者から高い評価を獲得しています。これにより「音楽×通信=KDDI」という独自ブランドイメージを確立し、競合他社との明確な差別化を実現しました。

【参考】au Fes Project(KDDI株式会社)

まとめ|BtoBブランディングで持続的な成長の実現を

価格競争からの脱却や採用力の強化には、顧客の心に響くブランド構築が不可欠です。合理的な情報発信だけでは差別化が難しい今、ライブの熱狂や感動と自社ブランドを結びつける「ライブ協賛」は、認知度向上や競合差別化に繋がる強力な一手となり得ます。

ライブ協賛支援サービスを提供するライエルは、これまで接点のなかった有名アーティストへの協賛を、あらゆる企業にとって身近なものにします。「自社の課題にどう活かせるか知りたい」「具体的な協賛事例や費用について相談したい」など、専門のコンサルタントが貴社の状況に合わせてご提案します。まずはお気軽にお問い合わせください。