アーティストライブ協賛によるマーケティングは、オンラインでの情報発信に注力して効果を挙げる「デジタルコンテンツ協賛」が中心となりつつあります。
ここでは、サンプリングなどのアナログな方法との相違点や、デジタルコンテンツ協賛の具体的手法、そして成功事例を紹介します。
アーティストライブの「デジタルコンテンツ協賛」という新常識
インターネット上での配信や自社サイトURLへの誘導に特化した「デジタルコンテンツ協賛」は、アーティストライブの協賛メニューを活用するうえで少しずつ一般化しています。その理由や、活用すべき素材については、次のようにいえます。
デジタルコンテンツ協賛と従来のライブ協賛手法との違い
従来のライブ協賛は、会場の看板にロゴを掲出したり、来場者にサンプリングを手渡したりといった手法が中心でした。これらは多くの人の目に触れる機会にはなりますが、その一方で
- 体験型・広告型の協賛は効果が測定しにくい
- ほかの多くの情報に埋もれてしまい、イベントが終わると忘れられてしまう
といった問題があります。
デジタルコンテンツ協賛は、アーティストの肖像やライブの映像といった公式素材の提供を受け、それを活用してWeb CMやSNSキャンペーンといったオンライン施策を展開する手法です。この手法の特徴は
- 定量的に効果測定できる(オンラインでの登録者数、自社サイトのアクセス分析など)
- イベント後も想起してもらえる(特設サイトや顧客の端末内データなどとして残る)
といったものです。
デジタルコンテンツ協賛は、マーケティング施策としての優位性が明確です。Web広告の表示回数やクリック率、SNSでの「いいね」やシェア数、自社サイトへの流入数といった具体的な数値で効果を測定できるため、ROI(投資対効果)を計測しやすく、次の施策に向けた改善(PDCA)も容易です。
また、一度制作したWeb CMやキャンペーンサイトなどのデジタルコンテンツは、イベント終了後も企業のオウンドメディアやYouTubeチャンネル、広告クリエイティブとして半永久的に活用できます。これは、協賛が一過性の「費用」で終わるのではなく、企業のブランド価値を高め続ける「資産」になることを意味しており、従来の協賛手法にはない大きなメリットと言えるでしょう。
デジタルコンテンツに埋め込むべきアーティスト公式素材の効果
デジタルコンテンツ協賛の価値の源泉は、なんといってもアーティストの公式素材が持つ力にあります。
ライブ会場を訪れたファンがアーティストに求めるのは「信頼できる本物」の情報およびコンテンツです。協賛企業からの発信であっても、それがアーティスト公認の素材であれば、ファンはそれを煩わしい広告としてではなく、喜ばしい公式コンテンツとして受け入れられます。
アーティストとファンの間には、長年かけて醸成された強い信頼関係と熱量の高いコミュニティが存在します。公式素材を通じたアプローチは、このコミュニティに直接的かつ深くリーチできるため、より強いエンゲージメントの獲得が期待できます。
また、実務的なメリットも大きいのが特徴です。アーティストの肖像権やライブ映像の著作隣接権といった複雑な権利関係は、アーティスト側との契約によってクリアされた上で提供されるため、企業はコンプライアンスを遵守した形で、安心してマーケティング活動に利用できます。
ライブ協賛メニューをフル活用!デジタルコンテンツ活用法3選

アーティストの著名度を活かしたデジタルコンテンツ協賛は、ライブ協賛によって得られるコンテンツのフル活用が成功の要です。高いマーケティング効果を得るための活用法として、次の3つが考えられます。
アーティストの映像素材を活用したWeb CM・SNS広告
最も代表的で効果的な手法は、ライブ映像を活用したWeb CMやSNS広告の制作です。具体的には、協賛したライブのハイライトとなる熱狂的なシーンを15秒~30秒のショート動画に編集し、動画配信ができる各種SNSで公開する方法が考えられます。
この施策の鍵は、アーティストのファン層や楽曲リスナーの年齢、性別、興味関心といったデモグラフィックデータに基づき、ターゲットへ精密な広告配信を行う点にあります。これにより、無駄な広告費を抑え、関心の高いユーザーへ効率的に情報を届けることが可能です。
さらに、ライブ本編だけでなく、普段は見ることのできない舞台裏のドキュメンタリー映像などを活用すれば、ファンにしか刺さらない「特別感」を演出し、SNSでの高いシェア率も期待できます。そして、制作したWeb CMから自社のキャンペーンページやアプリストアへ直接遷移させることで、ユーザーの熱量を逃さないシームレスな体験を設計することが、コンバージョンへの近道となります。
アーティスト公式SNSでの告知による自社サイトへのトラフィック誘導
著名なアーティストともなれば、その公式SNSは数千人から1万人以上の規模のフォロワーを抱える巨大なメディアです。この強力な影響力を利用し、アーティストのSNSアカウントから自社のキャンペーンサイトへの直接リンクを投稿してもらえれば、ほかの広告では考えられないほどの爆発的なトラフィック(サイト流入)が期待できます。
アーティスト公式SNSの掲載効果を最大化するためには、単なる告知に留まらない工夫が重要です。工夫のひとつとして、オリジナルのハッシュタグを用意し、プレゼントキャンペーンなどを実施することで、ファンによるUGC(ユーザー生成コンテンツ)の創出を促せます。
また、ライブ当日のリアルタイム投稿や、アーティストによるストーリーズでのメンション、ライブ配信での口頭告知など、多様な告知方法を組み合わせることで、キャンペーン期間を通じて継続的なエンゲージメントと情報鮮度を確保することが可能です。
ライブ映像の買い取りによる限定コンテンツの提供
Webサービスやアプリの会員数を増やしたい(あるいは解約率を下げたい)という課題に対しては、買い取ったライブ映像を限定コンテンツで配信する方法が有効です。サービスの強力なキラーコンテンツとなり、新規登録や継続利用の強力な動機付けとなります。
さらに、アーティストからの「会員限定の特別メッセージ映像」などを特典として提供すれば、顧客満足度を劇的に高められるでしょう。ほかには、オンラインでのパブリックビューイングやファン同士がコメントで盛り上がれる応援上映会などを企画することで、活気のあるユーザーコミュニティの形成にも繋がります。
デジタルコンテンツによるライブ協賛の成功事例3選
デジタルコンテンツ協賛の効果を具体的にイメージするには、実際の成功事例から学ぶのが一番の近道です。ここでは、目的や規模が異なる3つの特徴的なケーススタディを取り上げ、それぞれの成功のポイントを解説します。
【Ado × docomo】独占配信でキラーコンテンツ化!新規会員登録を爆発的に促進
dヒッツやdTVなどを統合して誕生したdocomoの映像配信サービス「Lemino」は、競争が激化する市場で新規会員をいかに獲得するかが大きな課題でした。後発サービスとして認知度を高め、登録の強力なきっかけとなるキラーコンテンツを必要としていました。
そこで実施されたのが、社会現象にもなったアーティスト・Adoの国立競技場ライブ「心臓」の独占無料配信です。多くのファンが熱望したこの歴史的なライブの映像を独占的に配信することで、他サービスとの圧倒的な差別化を図りました。さらに、ライブ本編だけでなく、舞台裏に密着したドキュメンタリー映像も用意し、ファンにとってのコンテンツの魅力を最大化しました。
※参考:https://lemino.docomo.ne.jp/
【ONE OK ROCK × Monster Energy】Web CMの共同制作でグローバルなブランド信頼を獲得
エナジードリンクブランドのMonster Energyにとって、コアターゲットである若年層に対し、グローバル規模でブランドの持つクールなイメージをいかに浸透させるかは重要なテーマです。国や地域を超えて、一貫したブランドメッセージを発信する必要がありました。
世界的に活躍するロックバンド・ONE OK ROCKとの長期的なグローバルパートナーシップの締結は、単発のスポンサーではなく、長期的な「パートナー」としての深い関係性を構築した点がポイントです。ONE OK ROCKの持つ音楽性や世界観と、Monster Energyのブランドイメージが完全に一致し、ファンからは「広告」ではなく「カッコいいコラボレーション」として熱狂的に支持されました。これにより、両者は世界中の若者から絶大なブランド信頼を獲得することに成功しています。
※参考:https://www.monsterenergy.com/ja-jp/music/one-ok-rock/
【KEEN × FUJI ROCK FESTIVAL】協賛イベントで「自ら公式素材を創出」する中小・中堅企業向けモデル
ライブ協賛マーケティングを行う中小企業の多くは、アーティスト自身の映像利用にあたって高額な予算を割くことは難しく、ライブの熱量を活用した効果的なデジタルコンテンツの獲得・制作に頭を悩ませがちです。
上記の課題に対しひとつの答えを示したのが、アウトドア・フットウェアブランド「KEEN」のFUJI ROCK FESTIVALでの協賛です。フェス協賛の一環として、会場の川辺で親子向けの川遊び体験プログラムを実施し。その楽しげな様子を自社のオフィシャルカメラマンが撮影し、ライブの雰囲気とブランドイメージを融合させた「独自の公式素材」を自ら創出したのです。
撮影された写真や映像は、参加者へのプレゼントや、自社のSNS・プレスリリースで活用されました。これにより、コストを抑えながら、フェスの楽しげな雰囲気とKEENの「自然と共に遊ぶ」というブランドイメージを強力に結びつけることに成功しました。
※参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000157.000059148.html
アーティストライブのデジタルコンテンツ協賛が向くケース

アーティストライブのデジタルコンテンツ協賛は、インターネット上での販売・認知度拡大を図る企業であればいずれも効果が見込めます。とくに以下の目的とは親和性が高く、爆発的な効果も期待できます。
Webサービス・アプリの初動を伸ばしたい
新しくリリースしたWebサービスやアプリの成功は、初期段階でいかに多くのユーザーを獲得できるかにかかっています。デジタルコンテンツ協賛は、この「初動」をブーストさせる強力な起爆剤となり得ます。
アーティストの限定ライブ映像の配信などをフックにすれば、リリース初期の広告効果を最大化し、ユーザー獲得の初速を飛躍的に高められるでしょう。初速の向上はサービスローンチの話題性を最大化し、メディア露出やSNSでの自然発生的な口コミ(オーガニックな拡散)を狙う好循環を生み出してくれます。
オンライン販売で競合との差別化を図りたい
ECサイトやD2C(Direct to Consumer)ブランドなど、オンラインでの販売を主力とする企業にとって、競合との差別化とブランドイメージの構築は永遠の課題です。デジタルコンテンツ協賛は、この課題に対する有効な一手となります。
ブランドの世界観に共感してくれる、熱量の高いアーティストのファン層は、商品や購入方法の機能的価値だけでなく「このブランドが好きだ」という情緒的価値も見いだしてくれます。情緒による結合は、長期的にブランドを愛し続けてくれるLTV(顧客生涯価値)の高いロイヤルカスタマーの育成につながるでしょう。
既存顧客とのエンゲージメントを深めたい
サブスクリプション型のサービスが主流となる中、新規顧客の獲得と同じくらい、既存顧客にいかにサービスを使い続けてもらうか、つまり「解約率(チャーンレート)を下げる」ことが事業の成長を左右します。
デジタルコンテンツ協賛は、この課題解決にも貢献します。自社サービスの会員であり続けることの「特別な理由」として、会員限定のライブ映像やアーティストからの特別メッセージを配信すれば、顧客満足度を大きく高められるでしょう。
さらに、会員限定のオンラインイベントなどを通じて、ファン同士が交流できる活気のあるユーザーコミュニティを形成・維持することも可能です。これにより、顧客とサービスの間に強い絆が生まれ、解約率の低減に繋がります。また、これらの施策を通じて得られる顧客データを分析し、ファン層のインサイトを深く理解することで、今後のマーケティング施策や商品開発に活かすこともできます。
まとめ
アーティストライブ協賛の際、そのメニューで得られた映像などを使ってオンラインでマーケティングを行う手法は、持続的なブランド価値向上と事業成果につながるものとして注目されています。とくにWebサービスやアプリ、そのほかのオンライン販売を主力とする企業にとっては、有効なマーケティング戦略だといえるでしょう。
ライブ協賛の実施にあたっては、アーティストとの複雑な権利交渉や専門的な知見が必要となります。「何から始めればいいかわからない」「自社に合うアーティストは誰か」といったお悩みをお持ちの担当者様は、ぜひ一度ライエルにご相談ください。貴社の課題に合わせた最適なプランをご提案します。