採用難の時代、募集を出しても若い世代の応募が伸びない最大の理由は「応募したい理由」が伝わらないことです。今の若者であるZ世代は「推し・友人・体験」で意思決定が加速することを踏まえると、効果の出る求人活動の方法としてアーティストライブ協賛も視野に入るでしょう。
ここでは、ライブ協賛を採用広報に直結させる設計と、地域別の協賛先選定、会場メニューの使い方、そして事例まで紹介します。
ライブ協賛でZ世代人材の採用につなげられるしくみ
Z世代の人材は「感情」と「合理性」が同時に満たされるときに行動します。お気に入りのアーティストを追う「推し活」に熱心な世代でもあり、推し活を通じて行動につながる体験をする機会も多く見られます。このような世代の特徴から、採用手段のひとつとして「アーティストライブの協賛」も視野に入ります。
広告回避を超えて共感を生む
アーティストライブは、没入体験によって協賛企業への「志望理由の物語化」を促し、求人活動をする企業への共感を生みます。ライブの没入感はバナー広告や説明資料より記憶に残りやすく、来場者は自分の言葉で語れる動機を獲得できるでしょう。
情緒とともに成立する合理性が応募行動に近づける
お気に入りのアーティストのライブは「情緒の高まり」と「納得」をひとつの接点で両立させ、印象深いメッセージを発する企業に対するアクションを誘引します。いわゆる「推し体験」で心が動いた勢いで、採用・就職に対する動機を言語化できるようになるのです。
地域別・Z世代人材採用のための協賛先の狙い方

協賛するライブの選定は「どこで採用したいか」で大きく変わります。都市圏での採用はジャンル・地域・会場規模を意識し、地方での採用はコミュニティを意識すると良いでしょう。
都市圏での採用のコツ|ジャンルと会場規模・地域に着目する
都市圏では、Z世代比率の高いポップスグループやアイドルの公演を協賛先として選定すると良いでしょう。都市圏にしかない、来場者密度が高い大型アリーナでの公園を選ぶことで、視認と行動のチャンスが増えます。
また、大学が密集する学都(学術都市)に近い会場であれば、デザインやエンジニア志望者のポートフォリオ保有率が相対的に高く、作品提出から面談移行までの速度が上がります。
地方での採用のコツ|地場コミュニティで深い関係性を醸成する
地方では、来場者同士あるいはアーティストと来場者といった「地域とのつながり」に着目すると良いでしょう。公演を行うアーティストが地元出身であったり、ゆかりのある地域であったりする場合が狙い目です。ア
来場者とのコミュニケーションがとりやすくなるよう、中規模ホールでの公演を狙うのも良いでしょう。騒音や混雑の負荷が都市の巨大会場より低く、説明や対話の時間を確保しやすいため、採用につながるコミュニティへの参加までの歩留まりが安定します。
Z世代人材からの応募を増やす協賛メニューの活用方法
ライブ会場で採用活動していることを十分にアピールするには「いつ・どこで・どう伝えるか」を丁寧に設計しなければなりません。具体的には、次のポイントを押さえると良いでしょう。
会場内CMは「3波」を意識する
会場内CMは開演前・転換・終演後の3つの波で効果を意識して放映すると、理解から行動、そして回収までの歩留まりが安定します。
開演前は「理解の時間」として、冒頭3秒で採用活動の概要を言い切ると良いでしょう。転換中は「行動の時間」であり、自社の問い合わせ先や、自社サイトの求人詳細にアクセスするためのURLを大きく掲示します。終演後もこれらのポイントを踏まえて行動に誘導することで、協賛の目的を達成しやすくなります。
採用活動のためのブースは「人が留まる場所」を狙う
ライブ会場内の企業ブースは「自然に人が止まる場所」に置くと、説明と登録が成立しやすくなります。具体的には、コンコースの合流点や物販導線の交差など、人の流れが緩む位置が適しているといえるでしょう。
課題となるのは、会場内の構造はさまざまであり、来場者の滞留地点の見極めは協賛ライブごとに必要となる点です。協賛事例に詳しい専門企業などの力を借りて、人員配置を含めた現場の見極めが必要です。
客席バナーは見やすく・今やる理由を伝える
客席バナーは長文を避け、応募行動の価値と行動を短く言い切りましょう。具体例として「今登録で面談確約」といったコピーが挙げられます。求人情報を今すぐ確認した方が良い理由を、Z世代が求める合理性を踏まえて端的に伝えるのも重要です。
また、掲げたバナーは視認しやすくしなければなりません。位置、照明の状況などを考慮して、客席バナーの掲示そのものに効果があるかどうかの検証も必要です。ここでも現場の熟知は欠かせないといえます。
採用・福利厚生に着目したライブ協賛・連動施策の事例
マイナビ|10代音楽イベント「マイナビ 閃光ライオット」協賛(若年層接点の形成)
マイナビは10代限定の音楽フェス「閃光ライオット」に特別協賛として参画しました。協賛の主旨は「夢や目標に向かって頑張るすべての人を応援したい」としており、若年層との継続的接点づくりとして協賛を実施しています。このライブでは、受賞者に対して副賞を用意しており、若者をサポートする姿勢を全面的に押し出すことで、若い求職者の注目を集めました。
参考:マイナビ公式ニュース
楽天|「Rakuten GirlsAward」でのメインスポンサー参画(若年層リーチと就業体験の創出)
楽天はファッション&音楽イベント「GirlsAward」にメインスポンサーとして継続参画しています。自社のスポーツ&エンターテインメント領域の取り組みとして位置づけ、若年層に対するブランド想起の強化を図っています。会場運営のアルバイト募集も複数シーズンで行われ、イベント運営の現場体験を通じた就業機会が生まれました。文化支援と雇用創出の接点を同一イベントで設計している点が特徴です。
参考1:楽天 スポーツ&エンタメ(Rakuten GirlsAward 記載)
参考2:会場運営アルバイト募集(2024 S/S)
参考3:会場運営アルバイト募集(2025 S/S)
ZOZO|音楽×ファッション大型イベント「ZOZOFES 2025」開催(自社カルチャー発信と候補者接点の拡張)
ZOZOはKアリーナ横浜で冠スポンサーを務める「ZOZOFES 2025」を開催すると発表しました。若者に人気のアーティストであるYOASOBIやLE SSERAFIMの出演予定を掲げ、ファッションと音楽の交差点でブランド体験を最大化する設計です。自社カルチャーの大規模発信は候補者のカルチャーフィット訴求に有効であり、採用広報の文脈での活用余地が大きいと言えます。過去には「ZOZOCOLLE」(一般向け合同展示会)の系譜もあり、文化施策の継続性がうかがえます。
参考1:ZOZOニュース(ZOZOFES 2025 開催)
参考2:ZOZOCOLLE(2012年の一般向け合同展示会報道)
ライブ協賛による採用成功の決め手は「良質な求人情報」

ライブ協賛による採用活動は、求人情報の提供方法が最後の決め手となります。会場から誘導した求職者に対しては、応募意欲に繋がる情報や窓口を提供するようにしましょう。Z世代向けでは、推し活に絡めたキャンペーンを実施するのも良い方法です。
入社後の将来をイメージしやすい広告の構成とする
一般的には、求人情報からイメージできる「入社後の自分」がはっきりしているほど興味を引きやすいといえます。イメージしやすさでいえば、Z世代は写真や動画による説明がある記述をよく目にしており、ビジュアルがないと「想像できない」として情報をシャットダウンしがちです。
ライブ協賛メニューから誘導した求人情報には、動画・映像・社員インタビューなどを掲載し、採用された後が想像しやすい内容とすると良いでしょう。
気軽に質問できる機会を用意する
デジタルネイティブであるZ世代は、ネット以外の手間がかかるコミュニケーションを嫌い、気になることがあっても質問などの接触アクションを起こさないことがあります。そこで効果的なのが、ライブ会場で見た求人情報を気軽に質問できる手段の準備です。
具体的には、LINEや各種SNSを問い合わせ窓口として「気になることはいつでも質問できる」とアピールする方法が考えられます。周知にあたっては、ライブ会場で知らせた求人情報ページなどに掲載すると良いでしょう。
推し活支援制度の導入・スポンサー継続を検討してみる
Z世代の就活は「売り手市場」であり、採用活動においては、ワークライフバランスや生活を充実させられる制度の有無がチェックされています。そこで考えられるのが、推し活を支援する制度や、スポンサーを継続する方針の検討です。
具体的には「推し活休暇」や「ライブ遠征サポート制度」など、ライブに参加するゆとりを与えるような制度を検討してみても良いでしょう。スポンサーを継続し、アーティストの肖像権利用やライブ映像の放映権を獲得して、会社で推し活をする機会を与えるのも良いといえます。
選考の透明化で企業は信頼を積み上げる
透明な評価は、辞退とネガティブな口コミのリスクを下げます。評価の中身を適切に示します。
企業は評価観点と期待アウトプットを公開する
職種ごとに観点(例:問題定義、検討過程、再現性)と提出フォーマット例を提示し、会場資料とオンライン情報を一致させます。
企業はフィードバックの型を決める
合否連絡に次回改善のヒントを添え、希望者には短時間の音声所見やテンプレート提供を用意します。誠実な対応は再応募と紹介につながります。
ライブ協賛による採用活動の成果の測り方
ライブ協賛で求人情報を掲出するなら、成果は「感触の良さ」ではなく「数値」で判断しましょう。応募とその先の行動で分けて数を計測し、比較軸を決めて改善サイクルを素早く回すようにすると、次につなげることができます。
「会場の熱量」を採用成果に変換するKPIの設計方法
ライブ協賛による求人活動の効果は、露出から関心への移行を可視化するのがポイントです。まずは問い合わせに至った数を時間帯(開演前・転換・終演後)で分けて取得し、どの波で注意が集まっているかを把握しましょう。
応募から関係化への橋渡しでは、コミュニティ(オンラインの交流スペース)参加率や、当日特典の回収率を指標にして、成否を判断します。例として「問い合わせから48時間以内の面談予約率」や「OB訪問の成約率」などを計測すると良いでしょう。
協賛先・時間帯・職種で改善をしくみ化する
ライブ協賛による採用活動の効果は「短く比べ、すぐ直す」運用を心がけましょう。比較軸を固定し、各軸で最短サイクルの改善を回すと、同じ予算でも面談化率と承諾率が伸びます。
■どこでやるかを比べる(協賛先の比較)
- 都市圏/地方、公演ジャンル、会場規模でKPIを並べて差を見ます。
- 次の機会では、伸びた手法を残し・伸びない手法を捨てる方針で協賛先を更新します。
■いつ伝えるかを変える(時間帯の最適化)
- 開演前=理解、転換=行動、終演後=回収でメッセージを切り替えます。
- 同じ内容を流さず、各時間帯に合ったCTA(登録・予約)だけを残します。
■誰に刺すかを磨く(職種別のABテスト)
- スキャン→面談の落ちどころを職種別に特定します。
- ランディングページの見出し、本文の一文、当日特典の組み合わせをABテストで検証します。
この3点を毎公演で必ず回す改善ループとして定着させると、施策は経験則ではなくデータで強くなります。改善のための記録は公演ID・時間帯・職種の形式で残し「何を変えたら、どこが上がったか」を一目で追える状態にすると良いでしょう。
まとめ
Z世代の採用では、心が動く体験と納得できる情報を同時に届けるしかけが必要です。推し活する若者達を狙ったライブ協賛による採用活動は、感情と合理性を融合させる効果のある手段として検討できるでしょう。協賛メニューを適切に活用すれば、露出機会と問い合わせを多く獲得できます。
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