ライブ協賛の効果はどのようにして測定するのか|主要指標と活用方法

ライブ・コンサートの協賛によるマーケティングは、中小企業が限られた予算で高い効果を実現できる戦略的手法として注目を集めています。音楽という感情的体験を通じて顧客との深いつながりを創出し、従来の一方向的な広告では得られない強力なブランド価値向上を実現できます。

ここでは、ライブ協賛マーケティングの重要性から効果測定、顧客育成まで、実践的なノウハウを解説します。

ライブ協賛後効果測定が重要といえる理由

ライブ協賛に限らず、マーケティング効果が見込める手法を実行した後は、効果の測定が必要となるのが普通です。実行前後の変化は、継続的に顧客にアピールするためデータとして活用され、ときとしてビジネスの今後の判断を左右することもあるからです。

株主や投資家への報告に必要となる

現代の会社はコーポレートガバナンスの強化により、あらゆる投資活動に対する説明責任が厳格化されています。とくにマーケティング予算については、株主や投資家からの監視の目が厳しく、定量的な効果証明が不可欠となりました。

こうした理由から、営業やマーケティング企画に携わる担当者は、経営陣から定量・定性の両面でレポートの提出が求められるのが一般化しています。効果測定は、上記のような報告を実施するにあたって必要となるものです。

今後の戦略と営業活動の判断材料となる

ライブ協賛などのマーケティングにおける効果測定の結果は、今後の営業活動について判断するための材料となります。第一に、反響の数から費用対効果を算出し、同様の手法を継続して用いるべきか・予算をどの程度確保するのか社内で検討することになるでしょう。

注目したいのは、適切に効果測定を行うことで「自社の事業がどの層に、どの程度まで関心を持ってもらえるのか」を見極められる点です。このデータは、今後のマーケティング戦略を変え、売上を伸ばすための適切な活動を導き出すことがあります。ほかにも、製品・サービスの開発にも役立てることができるでしょう。

ライブ協賛の効果を測定するときの指標

ライブ協賛の効果測定は、定量・定性の両面で行いましょう。それぞれにつき、どんな指標を用いるのか明確にしておくことが大切です。主要指標・重要指標としては、次のようなものが挙げられます。

定量的測定の主な指標

ライブ協賛における定量的な効果測定では、GoogleアナリティクスやSNSの分析ツールを使用し、ページが閲覧された数・問い合わせの数などの数値を取得します。厳密には、次のような指標を用いるべきでしょう。

■露出回数・リーチ数の測定

……協賛ロゴやブランド名がどれだけの頻度で露出され、何人にリーチしたかを数値化する基本的な指標となります。テレビ中継での露出時間、会場内での看板掲示時間、SNSでの言及回数などを総合的に計測し、ブランドロゴ露出量×視聴量×アテンション含有率という新しい手法も注目されています。

■CPA・ROI・コンバージョン効果

……協賛費用を新規顧客獲得数で割ったCPAと、協賛による売上増加を投資額で割ったROIは、協賛効果の経済的価値を直接的に示す重要な指標です。さらにコンバージョン率や売上貢献度を追跡することで、協賛活動が実際のビジネス成果にどの程度寄与したかを定量化できます。

■デジタル指標の活用

……SNSエンゲージメント率、ブランド検索数の増加率、ウェブサイト流入数・滞在時間などのデジタル指標は、現代の協賛効果測定において欠かせない要素となっています。

定性的測定の主な指標

定量的測定で用いるのは、数値で表せない「質」の部分を評価する指標群です。社内外のアンケート調査を中心に、次のような指標を重要なものとして掲げましょう。

■ブランド認知度・企業イメージの変化

……協賛前後でのブランド認知度調査や企業イメージ調査を実施し、協賛活動がブランド価値向上にどの程度貢献したかを測定します。特に音楽イベントでは、アーティストやイベントのイメージが協賛企業に転移する効果が期待できるため、イメージの質的変化を詳細に分析することが重要です。

■従業員満足度・そのほかの社内での効果

……協賛活動は外部向けの効果だけでなく、従業員のモチベーション向上や企業への誇りの醸成にも寄与します。従業員アンケートや採用活動での応募者数・質の変化を追跡することで、内部効果を定量化できます。

■顧客ロイヤルティ・NPS

……協賛活動を通じて既存顧客との関係性がどう変化したかを、NPS(ネットプロモータースコア)や顧客満足度調査で測定します。また、メディア露出の質的評価や競合他社との差別化ポイント強化についても、定期的な市場調査を通じて把握することが重要になります。

効果測定のタイミングと期間設定

効果測定の精度は、タイミングと期間しだいです。いつから、どのくらいの期間にかけて測定するのかスケジューリングし、協賛効果を正確に把握できます。スケジュール決定では、次のポイントを押さえておくと良いでしょう。

■協賛前にベースラインを測定する

……効果測定の精度を高めるためには、協賛実施前に現状のブランド認知度、企業イメージ、顧客満足度などのベースライン値(=測定を始める前の状況)を確実に把握しておく必要があります。これにより、協賛後の変化を正確に測定できるようになり、協賛活動の純粋な効果を分離して評価することが可能になります。

■スケジュール設計+リアルタイム測定で精度を高める

……イベント期間中はSNSエンゲージメントやウェブサイト流入などをリアルタイムで監視し、必要に応じて追加施策を実行します。協賛後は短期(1か月以内)、中期(3か月以内)、長期(6か月から1年程度)の3段階で効果測定を実施し、それぞれ異なる指標に焦点を当てることが重要です。

■測定の最適化と外部要因の考慮

……測定頻度は指標の性質に応じて調整し、ブランド認知度のような変化の緩やかな指標は四半期ごと、SNSエンゲージメントのような即効性のある指標は週次で測定します。また、季節性や市場トレンド、競合他社の動向、天候による消費行動の変化なども考慮に入れ、協賛効果を正確に分離して評価することが求められます。

ライブ協賛の事例|実際に効果測定に用いられる指標とは

ライブ協賛の事例はいくつかありますが、効果測定の結果や使用する指標の公開が行われているケースはほとんどありません。ここでは、主要な大企業の協賛事例から、IR情報などに基づき、測定に用いられたと考えられる指標の紹介を行います。

ビールメーカーの人気アーティストライブ協賛事例

アサヒビールは若年層へのブランド浸透を目的に、2024年にONE OK ROCKワールドツアーの日本公演を協賛しました。音楽とアルコール飲料の親和性を活用したクロスマーケティングを展開したかたちです。この協賛では、キャンペーンサイトのアクセス解析やハッシュタグ投稿数、公式アカウントのフォロワー増加数などから効果測定が行われたと考えられます。

【参考】『アサヒスーパードライ』新CM 「最高の渇きに。ONE OK ROCK」篇6月3日展開開始

航空会社の地域密着型音楽フェス協賛事例

日本航空(JAL)は各地で、全国各地の音楽フェスに協賛しています。効果測定には、会場内のブランドロゴ露出回数、参加者へのアンケートによるブランド認知度変化や、公式SNSの投稿数、エンゲージメント率が用いられていると考えられます。航空業界では、搭乗者数や予約数の変化も追跡され、協賛の直接的な売上効果と長期的なブランド価値向上の両面から評価されるのが一般的です。

【参考1】JALフェスSAPPORO|つながる、ひろがる(公式サイト)

【参考2】JAL・JTAで行くMIYAKO ISLAND ROCK FESTIVAL2024(公式サイト)

生命保険会社による福祉施設ミニライブの協賛事例

メットライフ生命は全国の児童施設向けミニライブ30回実施により、CSR効果を多角的に測定しました。この協賛の目的は、サステナビリティの重要課題のひとつである「豊かな地域社会の創造に寄与する」活動の一環として「子どものよりたしかな未来のための支援」を行うものとされています。効果測定にあたっては、協賛前後の地域住民認知度比較に加え、SNSエンゲージメント率などが採用されたと考えられます。

【参考】メットライフ生命「100万人のクラシックライブ」協賛プレスリリース

効果測定結果の活用方法

ライブ協賛の効果測定は、データを収集して終わりではありません。資料作成やプレゼンをスマートに行うことで、経営陣の判断や予算、今後の施策につなげることができます。具体的には、次のようなポイントを押さえたいところです。

適切に社内報告レポートを作成する

社内報告レポートは、協賛効果を理解しやすく、スムーズに今後の意思決定につなげられるような構成としましょう。

■データを可視化する

……定量データと定性データをバランス良く配置し、グラフやチャートを活用して視覚的に理解しやすいレポートを作成します。SNSエンゲージメント率の推移、ブランド認知度の変化、競合他社との比較データを組み合わせることで、協賛効果の全体像を明確に示せます。また、改善提案などの次の計画を具体的に明示し、継続的な協賛活動への道筋を示すことが重要です。

■経営陣向けの構成とする

……経営陣向けの説明資料は、協賛の目的、主要成果、ROI、今後の提案が端的にわかるような構成と。最初に協賛投資額とリターンを数値で提示し、続いて定性的効果を簡潔に説明することで、経営判断に必要な情報を効率的に伝達できます。

効果的なプレゼン手法を考案する

協賛効果を社内で効果的に伝えるにあたり、データに基づいた説得力のあるストーリーテリングは不可欠です。

■ストーリーテリングとROI説明

……協賛活動を単なる数値の羅列ではなく、ブランド価値向上のストーリーとして構成し、聴衆の感情に訴えかけながら論理的に効果を説明します。ROI計算については、算出根拠を透明化し、保守的な見積もりを示すことで信頼性を確保することが重要です。

■リスクと機会の両面分析

……協賛効果の成功面だけでなく、課題や改善点も率直に報告し、リスクと機会の両面から分析を提示します。短期的な露出効果と長期的なブランド価値向上の関連性を明確に説明し、質疑応答では想定される予算や効果に関する質問への回答を事前に準備しておくことで、説得力のあるプレゼンテーションを実現できます。

協賛先選定の判断基準を確立する

ライブ・コンサート・イベントなどへの協賛を引き続き行うのであれば、初回のデータを次の協賛先の選定に活かしたいところです。

■マッチング度を評価し、データベースを構築する

……ターゲット層とのマッチング度を定量的に評価する基準を設定し、過去の協賛実績データベースを構築して、協賛先ごとの効果パターンを分析可能な状態にします。協賛先の信頼性や継続性についても、財務状況、過去の協賛実績、業界での評判などを総合的に評価する指標を策定することが重要です。

■競合分析とリスク管理

……競合他社の協賛状況を継続的に分析し、差別化戦略を構築するとともに、協賛先の選定においてリスク評価を実施します。契約条件についても、効果測定結果に基づいて最適化を図り、成果に応じた柔軟な契約構造を提案することで、双方にとってメリットのある協賛関係を構築できるようになります。

まとめ

ライブ協賛マーケティングは、中小企業にとって費用対効果の高い戦略的手法として大きな可能性を秘めています。音楽という感情的体験を活用することで、従来の広告手法では実現困難な深い顧客関係を構築し、長期的なブランド価値向上を実現できます。

成功の鍵は、明確な目標設定、適切な効果測定、そして継続的な顧客育成です。今回解説した手法を参考に、自社に最適なライブ協賛戦略を構築し、持続的な成長を実現していきましょう。

ライエルでは、ライブイベントマーケティングの企画から効果測定まで、包括的なサポートを提供しています。貴社のマーケティング課題解決に向けて、ぜひお気軽にご相談ください。